「チェンジのときの声が不安定になる」シリーズの続きです。

前回で、その不安定さを解消するための4つの段階、

  1. 呼吸を腹式呼吸にして重心を下げるようにする
  2. リップロールを使って喉をしっかりあたためてから歌う
  3. ヘッドボイスをうまくつかって、声の響きを顔の中心にまで広げていく
  4. 高い音域になってきても、同様にヘッドボイスを使って、裏声を芯のある強い音に作っていく

の1番目、姿勢と呼吸の大切さをお伝えしました。

今回では2、3番目、リップロールからの〜ヘッドボイス、を取り上げます。

リップロールに関する記事はこちらを参照してください。
▶声のトラブル、その前に・・②

実はこの2つ、両方をうまく使うことでヘッドボイスを作っていくのにとても効果的に用いることができます。

ヘッドボイスがうまくいかない時に

ヘッドボイス、直訳すると「頭声」(とうせい)と言って、頭に響かせる声の事を指すのが一般的なのだと思います。この頭声=ヘッドボイスを導くやり方はきっといろいろとあるのだと思いますが・・・私が常にやっていることは、一番わかりやすく言えば、まず声を鼻の方、顔の中心に響かせる、いわゆる「鼻声」を作っていく、そしてその響きを頭に広げていく、というやり方です。

このヘッドボイスが響いてくると、声の響きが俄然変わり、まず声に張りが生まれ、だいたいパワフルになります。またお風呂で歌うの項でお伝えしたように、声がどんどん頭に体に響くので、力を抜いて声を出せる上に、喉も痛くならない、かつパワフルな声、さらに音域も広がっていく、という効果抜群の発声方法なのですね。

しかし最初は、鼻声を作りたいあまりに喉を締め付けて声を出し、すぐに喉が痛くなってしまったり、咳き込んでしまう、という結果になりがちです。

そこで役に立つのがリップロール、なのです。リップロールなら喉を締め付けることなく、ヘッドボイスで使う鼻のスペース、鼻腔を響かせることが容易にできるんです。

鼻からの空気の通り道の、大きな赤い部分が鼻腔と呼ばれるところです

私のレッスンでは個人レッスンでもグループレッスンでも、まず最初にこのリップロールを必ず、必ず行います。リップロールをしないでいきなり歌うことはまずしません。


このリップロールは以前も、のどを痛めないようにするための準備運動、としてご紹介しましたが、喉を温めるのと同時に、鼻につながっている器官、鼻腔を響かせるためにもとても有効なエクササイズなのです。

日本語ではまず使わない器官

まずはこの鼻腔に音を響かせること、から始まります。この器官は日本語を話す際にはまず使うことのない器官なので、ほとんどの方が響かせ方を知りません。

ちなみに英語ネイティブの方は本当に自然に、よく鼻腔を響かせていて、普通にしゃべっている状態でも常に響いている音なのですね。まあ人によっても、お国柄によっても微妙に違いますけれど、女性も男性も、よくガンガンに突き刺さってくる感じに声が響いてきます。子音の種類もわんさかありますから、そうなってくるのでしょうか。。それに言葉のイントネーションも豊かですし、英語特有の「言わなきゃ伝わらない」(ローコンテクスト文化と言われます、逆に日本語はハイコンテクスト文化=直接的な表現を好まない)がそうさせているのかもしれません。。。

まあとにかく、そんなところから、今回は少し英語発音からのアプローチでご紹介したいと思います。

前回もお伝えしましたが、姿勢を正しくして、お腹周りの浮き輪を想像しながら、肩や首に力が入らないようにお腹に少し力を入れて行うことを忘れないで下さいね。

今回はまず基礎編です。では実際どのようにやっていくか見ていきましょう。Let’s get started!

ヘッドボイス・基礎編〜鼻声からリップロールまで

1. Nの発音で、ンヌを作る

  • 英語のNの発音、カタカナで書きますとンヌ、という感じになります。まずこの音を確認しましょう。日本語のですと口が閉じてしまう方もいるので、そうならないように、ンヌ、としてくださいね、なるべく喉に力が入らないようにするためです。ここで何度か、ンヌ、ンヌ、と発音してみましょう。
  • Nの音とは舌先を前歯の裏と歯茎の境目ぐらいにつけて弾かせる音なのですが、その舌先を付けたまま、声が鼻から抜ける感じで、ンーーと出してみてください。鼻にビリビリと音が感じるようであれば正解です。その状態ですと、声が鼻腔に響いています。

2. 鼻声をリップロールにつなげる

  • その響きを何度か確認して鼻にしっかりと声が響いてきたら、その響きをキープした状態でリップロールをやってみてください。その時に少し上唇を上に上げる感じでやると、鼻の方に音が響きやすくなるでしょう。
  • そのリップロールで音階を付けていきます。下から中音域、高温域まで、裏声にチェンジしてしまう音域をカバーできるような範囲で音階をつけて出してみてください。♫ドレミファソファミレド→(半音上からスタートして)ドレミファソファミレド→(さらにもう半音上からスタートして)・・・という風に、ゆっくり進めるほうがいいですね。鼻に響かせている状態をなんとかキープしつつ、喉を締め付けないように気をつけながら、中音域から高温域までつなげて行きましょう。
  • 高温域になってくると、クセで喉に力を入れてしまいがちなので、そこはぐっと我慢です!のどに力が入りそうになったら、ぐぐっとお腹に力を入れてみて下さい。
  • リップロールで何度か、音階の下から上、上から下、と行い、まず喉に力が入らない状態での音の響きを、体に覚えさせます。

自分の耳で声がよく聴こえるようになったら正解です

いかがでしょうか?すでにここまででかなりなボリュームになってしまったので、ここでストップします、が、ここまでできるようになると、実際にヘッドボイスで発声していくことがかなりスムーズになるはずです。

上の図で見ていただいたように、鼻腔というスペース、頭の中ではかなり大きなスペースですよね。実際、このスペースが響くようになると、自分の耳にも近い場所なので、自分の声が自分の耳でよく聴こえるようになってきます。その聴こえ方が普段と違うな?すごく響いてきたな?と感じていただいたら、まず間違いありませんね。

もしよくわからない、という場合は、まだ喉だけに響いている状態かもしれません。そうしたら、最初のンヌ、にもどって、鼻に抜ける声をもう一度確認してみましょう。

先にも伝えましたが、日本語ですとほとんど使わない器官なので、一般の方は使い方を知りません。なので、使ったことのない器官ですから最初はわからなくて当然です。何度でも、根気よくトライしてみて下さいね。

次回の記事では、実際にヘッドボイスを声につなげていく方法を見ていきます。